絹本著色仏涅槃図(安立院)
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更新日:2024年2月20日
安立院
平成10年登載
この仏涅槃図は、落款によって作者が判明することと、線の表現がとても的確で全体として優れた作品に仕上がっています。
作者は、画面の左下部に捺印された「春卜」と読める白文方印によって、江戸時代中期の絵師大岡春卜であると思われます。春卜(春朴とも)は、延宝8年(1680)大阪に生まれ、長じて京都大覚寺の坊官(寺院の庶務を司る役職)を務めるかたわら、当時もっとも栄えた絵画の流派である狩野派の技法をほぼ独力で学びました。独力とはいっても、相当な技量に達していたようで、狩野派の継承者のひとり狩野如川とは親密な間柄であり、享保20年(1735)には絵師としては高い官位である式部卿法眼に叙せられています。代表作には高雄山神護寺の障壁画や、狩野派の描き方を後世に伝えるための数種の絵手本があり、宝暦13年(1763)京都で亡くなりました。
この仏涅槃図には、雲・木の描法、人物の輪郭線など、明らかに狩野派の画風をうかがうことができます。落款と併せ考えるとき、大岡春卜の遺作のひとつと考えてよいでしょう。春卜は、肉筆画の遺品が少ない人物ですが、本図はそのひとつとして江戸時代の絵画史を考える上で、とても貴重な文化財です。
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