油絵修復
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更新日:2024年4月3日
浅尾丁策
平成8年指定(同12年保持者死亡により解除)
絵画の画面や額縁・表具は、ほこりの付着や外部からの衝撃を受けるなどして、年代を経るにしたがい褪色や傷みが生じます。このような傷みを直し、本来の姿に近い状態に戻す仕事が修復作業です。
日本の伝統的な仏教絵画等の修復は、古来より専門の職人がおりましたが、油絵は明治時代に本格的な伝来をみたため、以後、昭和初期まで修復技術専門の職人はほとんど存在しませんでした。浅尾丁策さんは、そうした油絵修復を日本でもっとも早く手がけた人物です。
浅尾さんは、下谷区二長町(現在の台東2丁目)で油絵筆の製作販売店・拂雲堂を営む浅尾浪治氏の長男として、明治40年9月27日に誕生。大正14年神田の画材店竹見商店の店員となり、やがて画材全般の知識を身につけ、昭和2年上野桜木の現在地に浅尾拂雲堂を開業しました。この間、油絵の修復にも興味を持ちましたが、当時、修復技術を有する専門家はおりませんから、美術館での油絵鑑賞はもちろん、古美術商で購入した絵画を子細に分析するほか、東京美術学校(東京藝術大学の前身)教授の田辺至や画家の山下新太郎ら、修復に詳しい人物に師事するなど、自ら研鑽を重ねました。
戦後、浅尾さんは日本での油絵修復の先駆者として活躍され、昭和50年エリザベス女王が来日の際に持参した絵画や、宮内庁所蔵の絵画を修復するなど、多くの作品を手がけました。現在、油絵の修復はさまざまな科学機器を使用した調査・研究がなされていますが、浅尾氏の卓越した鑑識眼と修復技術は、美術界でも高い評価を受けていました。
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