稲垣利兵衛家文書
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更新日:2024年2月26日
台東区教育委員会
令和4年登載
稲垣利兵衛家文書39点は、寛政8年(1796)から明治4年(1871)にかけて作成された、同家の旧蔵資料です。本文書は令和元年11月、東京都稲城市の古書店より台東区教育委員会が購入したものです。
稲垣家は屋号を池田屋といい、江戸時代に両替屋・質屋・酒屋・炭薪仲買などを営んだ商家です。当主は代々利兵衛を名乗りました。同家は本所荒井町(現在の墨田区本所)にあり、のち湯島天神門前町(現在の文京区湯島)に移転しました。
なお安政2年(1855)の大地震の際には、湯島天神前の池田屋が近隣に3日間酒を振舞ったという記録があり(畑銀鶏『時雨廼袖』)、災害時には地域の富裕層として、近隣を扶助する存在であったことがわかります。
本文書にみえる同家の交渉先は、(1)池田屋の本家・同族、(2)菩提寺、(3)貸借先・売買先、(4)奉公人とその関係者に大別できます。
同家の本家は浅草福富町二丁目(現在の台東区寿三丁目)にあった大店、池田屋稲垣市兵衛家でした。池田屋の出店は江戸市中に数十あったといわれており、いわゆる暖簾内として、同族を形成しました。本文書には池田屋本店から利兵衛にあてた養老手当の証券や、池田屋の同族から利兵衛にあてた借用書など、池田屋の本家・同族に関する資料が含まれています。
市兵衛家・利兵衛家ともに菩提寺は浅草新寺町の願信寺でした(浄土真宗。台東区元浅草三丁目に現存)。明治11年1月の願信寺明細には、檀家総代として稲垣市兵衛の名がみえます(『浄土真宗明細簿』)。本文書には同寺の関連資料が含まれており、金銭のやり取りなど、商家と菩提寺の関係の一端が判明します。
以上のように本文書は、浅草地域を中心とした商家同族の資料として貴重なものです。
池田屋本店(市兵衛)が利兵衛にあてた養老手当の証券 天保12年(1841)
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