令和5年第2回区議会定例会区長所信表明
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更新日:2023年6月5日
はじめに
令和5年第2回区議会定例会の開会にあたり、私の区政運営に対する所信を申し述べ、区議会及び区民の皆様のご理解、ご協力を賜りたいと存じます。
去る4月23日の台東区長選挙におきまして、多くの区民の皆様のご信託を得て、引き続き区政運営を担わせていただくこととなり、改めて、基礎的自治体の長としての使命と職責の重さを深く受け止めています。
私はこれまでの2期8年の間、区政運営の最高指針である基本構想や長期総合計画の策定を行うなど、将来像である「世界に輝く ひと まち たいとう」の実現に向け、時代に沿った施策を着実に展開するとともに、子育て世帯や高齢者・障害者の方々に寄り添った取り組みの充実を図るなど、台東区の更なる発展に全力を尽くしてまいりました。
一方、令和2年初頭から感染拡大の波を繰り返してきた新型コロナウイルス感染症という未曾有の危機は、私たちの暮らしや事業活動へ大きな影響を与えました。
私はワクチン接種の体制整備や、休日・夜間の発熱相談センターを区独自に設置するなど、全庁をあげて感染症対策に取り組んでまいりました。
また、我が国の社会経済は緩やかに持ち直しているものの、国際情勢を背景とした原油価格や物価の高騰など、未だ区民生活に影響が及んでいます。
そのため、区内公衆浴場に対する燃料費支援など事業者に対する支援を行った他、「こども商品券」の配付や、23区で初めてとなる学校給食の食材調達の全面支援など、家計の負担が増している子育て世帯の支援も実施しています。引き続き対策を講じていく必要があると認識しております。
加えて、少子高齢化の更なる進行や孤独・孤立問題の顕在化、デジタル技術の急速な進展など、先送りできない課題は山積しています。
私は、これからの4年間、社会経済状況の変化に的確に対応しながら、区政運営の長期的指針である長期総合計画を着実に推し進めることで、「ひと」も「まち」も輝き、区民の皆様が住んでよかった、暮らしてよかったと誇りと愛着を持ち続けられるまちの実現に向け、全力で区政運営に邁進してまいります。
今後の区政運営について
それでは、今後の区政運営について、区の将来像を実現するための基本目標ごとに申し上げます。
あらゆる世代が生涯にわたって成長し輝くまちの実現
はじめに、「あらゆる世代が生涯にわたって成長し輝くまちの実現」についてです。
社会状況の変化に伴い、妊産婦、子供またはその家族等が抱える課題は複雑化しており、様々な分野にわたる相談に対応できる体制を整備し、的確な支援につなげる必要があります。また、障害のある方が住み慣れた地域で自分らしく暮らしていけるよう、松が谷福祉会館の機能充実を図ることが重要です。
私は、全ての子育て世帯及び子供・若者への一体的な相談支援体制の強化を図るとともに、引き続き、障害の状況や生活環境など一人ひとりに寄り添った支援を行い、その拠点として「(仮称)北上野二丁目福祉施設」の整備を進めてまいります。
また、ICTを活用した教育の重要性は今後ますます高まってまいります。
そのため、区内の各学校や、先進自治体におけるICT活用の優れた事例の共有を通して、教員の指導力の向上につなげることで、児童・生徒の情報活用能力のさらなる育成を図ります。
引き続き、教育委員会と連携し、ICT教育をさらに推進することで、希望ある未来を創造する児童・生徒を育成してまいります。
次代を担う児童の健全育成及び保護者の仕事と子育ての両立支援のためには、こどもクラブの待機児童解消は喫緊の課題です。区では、民設こどもクラブの誘致などの取り組みを進めており、今月1日には新たに2か所開設いたしました。今後も、申請者数の増加が予想されることから、現在予定している対策に加えて、令和6年度に新たに1か所新設いたします。
引き続き、待機児童対策をはじめ、安全・安心な放課後の居場所づくりに努めてまいります。
さらに、人生100年時代の到来に伴い、国は学校教育から離れたあとも、それぞれのタイミングで学びなおすリカレント教育を推進するなど、生涯学習の重要性が一層高まっており、誰もが学習機会を得られるよう、取り組みを行っていく必要があります。
そこで、新たな学習ニーズに対応するため、ICT技術を活かした学習環境の整備や区民ギャラリーの設置、図書館機能の充実など、生涯学習センターの機能強化を進め、将来にわたって多くの区民が自ら学び続けることができる環境を整備してまいります。
また、台東リバーサイドスポーツセンターの陸上競技場については、老朽化による機能低下等の課題に対応するため、大規模改修工事を行い、多種多様なスポーツを快適に楽しめる、魅力あるスポーツ施設の拠点を整備してまいります。
いつまでも健やかに自分らしく暮らせるまちの実現
次に、「いつまでも健やかに自分らしく暮らせるまちの実現」についてです。
健康であることは、いきいきとした豊かな生活を送る礎であり、人々の願いでもあります。
新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の位置づけが変更となりましたが、引き続き、社会経済活動と感染対策の両立を図ることが重要です。
そのため、区では発熱受診相談センターの運営を継続し、相談への対応や医療機関の案内を行うとともに、基本的な感染対策の周知啓発に努め、感染が拡大した場合は、速やかに必要な対策を講じてまいります。
また、本区においても、少子高齢化や核家族化の進行、住民相互のつながりの希薄化等により、8050問題やダブルケア、ヤングケアラーなど、既存の制度や支援体制による解決が困難な事例が顕在化しています。
そのため、社会福祉協議会など関係機関との連携を強化するとともに、「相談支援」、「参加支援」、「地域づくりに向けた支援」を一体的に実施する事業や、区役所への地域福祉コーディネーターの配置を検討するなど、複合的な課題を抱える個人や世帯を、適切な相談や支援につなげる環境づくりに取り組みます。
さらに、今後、75歳以上の後期高齢者人口が増加することが予測される中、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせる体制を構築していくことが必要です。
令和6年度に開設予定の「(仮称)竜泉二丁目福祉施設」は、特別養護老人ホームの入所定員の充実や障害者の高齢化を見据え共生型のサービスを提供するとともに、介護予防の普及啓発や在宅介護の質の向上、区内介護サービス事業者への支援など、高齢者福祉施策の更なる充実を図ってまいります。
活力にあふれ多彩な魅力が輝くまちの実現
次に、「活力にあふれ多彩な魅力が輝くまちの実現」についてです。
本区は、まちや日々の暮らしの中に、江戸の粋と人情、歴史と文化が息づいており、先人の方々によって、今日まで築き上げられた、多彩で粋な文化は、区民の誇りであり、このまちを発展させてきた力の源です。
今年は、徳川家康を主人公とした大河ドラマが放送されるなど、江戸の歴史や文化に注目が集まっています。
この機会を捉え、江戸から続く伝統や文化などの地域資源を活用し、講演会やガイドツアー、講座などの様々な事業を展開することで、本区の魅力「江戸たいとう」を広く発信してまいります。
また、少子高齢化や人口減少が本格化する我が国においては、人口構造の変化が、産業活力の低下や消費市場の縮小などの深刻な影響を地域経済にも及ぼすことが懸念されています。
そこで、果敢に挑戦を行う区内中小企業に対し、タイ・バンコクなどで、海外での販路開拓を支援するとともに、民間の産業交流施設を活用し、多様な人材との交流の場を提供することで、産業の活性化と起業家の創出につなげてまいります。
さらに、今後区内中小企業の現状を把握するための実態調査を行い、本区の産業振興の新たな指針となる計画を策定することで、区内中小企業の支援などに効果的に取り組んでまいります。
誰もが誇りや憧れを抱く安全安心で快適なまちの実現
次に、「誰もが誇りや憧れを抱く安全安心で快適なまちの実現」についてです。
本区には、今なお歴史を感じる街並みなど、数多くの地域資源が存在し、それぞれの地域が独自の輝きをもって成長してきました。
今後もこうした地域ごとの特性を活かして、個性豊かな街並みや、まちの活力を創出し、都市計画マスタープランに掲げる各地域の将来像の実現に向け、地域の方々と連携しながら、着実にまちづくりに取り組んでまいります。
上野・浅草地区における歩行者中心のまちの形成に向けた検討や東上野四丁目地区土地区画整理事業、朝倉彫塑館通り沿道を中心とする「街なみ環境整備事業」など、各地域におけるまちづくりを展開してまいります。
また、北部地域のまちづくりの核となる旧東京北部小包集中局跡地については、「地域産業の育成」、「賑わい・交流の創出」、「既存公共機能の維持」というコンセプトを踏まえながら、新しい時代にふさわしい施設とすることを目指し、北部地域がより魅力あるまちとなるよう引き続き取り組んでまいります。
さらに、今年は関東大震災から100年の節目の年であることを機に、区内に甚大な被害をもたらした大震災の記憶を風化させることなく、災害教訓の継承や今後高い確率で発生するとされている首都直下地震に備え、防災・減災への取り組みを強化していく必要があります。
そこで、区では、「たいとう関東大震災100年事業」として、「災害教訓の継承」、「防災意識・防災行動力の向上」などの取り組み方針を基に、関東大震災パネル展や防災講習会の開催、防災力拡充に向けた事業等を実施することで、災害に対する自助・共助・公助の充実や連携を一層図り、総合的に地域防災力を強化してまいります。
多様な主体と連携した区政運営の推進
次に、「多様な主体と連携した区政運営の推進」についてです。
情報通信技術の目覚ましい発展、新型コロナウイルス感染症の発生を背景に社会全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでおり、区においてもICTを効果的に利活用していくことが重要です。
そこで、行政サービスのオンライン化の推進などにより、区民の利便性の向上を図るとともに、新たなAI技術を活用した実証実験を行うなど、業務の効率化を推進し、質の高い行政サービスにつなげていきます。
また、ICTの利用に不慣れな区民を対象に、スマートフォンの使い方などを学んでいただくための講師派遣など、障害の有無や年齢などにかかわらず、誰もがICTを利活用できる社会の実現に向け、引き続き取り組みを推進してまいります。
社会状況の変化に伴う、区民ニーズの多様化・複雑化、将来的な人口の減少などを背景に、区有施設に対し求められる機能や役割は変化しています。
また、特別養護老人ホームの再編等に伴い、新たな活用の検討が必要な区有施設や区有地については、行政課題の解決を図ることはもとより、区民の意見を踏まえながら地域の活性化に資する活用を図っていく必要があります。
そのため、ファシリティマネジメントの考え方を取り入れ、中長期的視点から施設の最適化を図るとともに、官民連携も含めた効果的な手法など、様々な観点を踏まえながら取り組んでまいります。
補正予算について
続きまして、補正予算について申し上げます。
今年度予算につきましては、先の定例会で申し上げたとおり、政策的な新規・充実事業の経費については、当初予算への計上を原則として見送ったことから、本定例会において、補正予算をお願いするものです。
今回の補正予算では、区民の安全安心な暮らしを確保するなど、喫緊に取り組むべき課題や、台東区の将来像の実現に向けて、今後重点的・優先的に取り組む事業を中心に編成いたしました。
それでは、私の思いを込めた、補正予算の主な事業について申し上げます。
まず、「ヤングケアラーの支援」についてです。
ヤングケアラーは、家庭などにおける責任や負担の重さにより、学業や友人関係に影響が出る可能性がありますが、家庭内の問題であることや、本人や家族に自覚がないといった理由から、表面化しにくい構造にあります。
そのため、区内の小学生から高校生までの児童・生徒を対象に行うアンケート調査を通じて、子供たちに気づきを促すとともに、ヤングケアラーの実態把握に努めてまいります。
引き続き、本人の育ちや教育に影響が生じている子供たちを早期に発見し、細やかな支援につなげていきます。
次に、「第2子の保育料などの無償化、私立幼稚園における預かり保育事業の支援」についてです。
子供たちの健やかな成長を支えることは、区としての責務でもあり、安心して子供を産み育て、子育ての喜びを実感できることが何よりも大切です。
そこで、区では東京都に先立ち、台東区独自の取り組みとして、第2子の保育料などの無償化を早期に実施してまいります。
さらに、預かり保育事業を実施する私立幼稚園に対する支援を充実することで、幼児の教育環境や地域で子育てをしやすい環境を整備してまいります。
次に、「区立中学校の部活動の地域連携・地域移行」に向けた取り組みについてです。
区立中学校の部活動については、教員の長時間労働や少子化に伴う生徒数の減少などの課題が指摘されており、持続可能な活動環境を整備する必要があります。
そのため、休日における中学校部活動の地域連携・地域移行に向けて、運動部においてモデル事業を実施・検証し、生徒が将来にわたりスポーツや文化芸術活動に継続して親しむことができる機会を確保してまいります。
次に、「予防接種事業の拡充」についてです。
帯状疱疹は、50歳以上になると発症頻度が高まるとされ、発症すると神経痛が続くなど、生活の質を大きく損なうことがあり、発症予防のためにはワクチンの接種が有効とされています。
そこで、発症予防を図り、区民の健康増進に寄与するため、50歳以上の区民の方に対するワクチンの接種費用の助成を行ってまいります。
また、おたふくかぜワクチンについては、これまでも1回目の接種費用の助成を行ってきましたが、小学校への入学前年度の子供を対象に、新たに2回目の接種費用についても助成の対象とし、子供を感染症から守るとともに、子育て世代の経済的負担の軽減を図ってまいります。
次に、「観光振興事業の充実」についてです。
観光の振興は、旅行業をはじめ宿泊業や飲食業を含めた幅広い産業に、経済面の波及効果と雇用の創出などを生み出し、地域の活性化に大きく寄与します。
本区には、江戸の昔から続く名所旧跡や地域に根付く伝統行事など、多彩で粋な文化資源が数多く存在するため、文化の力による観光の振興に取り組んできました。
今後も、文化資源の活用方法を検証するモニターツアーの実施など、有形無形の区内文化資源に新たな視点や付加価値を加えることで、保存と活用の両立を図り、観光の持続的発展を推進してまいります。
次に、「カーボン・オフセット事業の実施」についてです。
国は、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。本区においても、二酸化炭素排出量を実質ゼロとする「ゼロカーボンシティ」を目指しており、より一層の脱炭素化を推進していく必要があります。
そのため、特別区と多摩地域の市町村が連携し、持続可能な森林循環の確立に広域的に取り組み、温室効果ガスの削減を図ることで、脱炭素化を推進してまいります。
次に、「台東区庁舎整備基金の創設」についてです。
本庁舎は、今年で竣工から50年が経過し、施設の老朽化が進むなどの課題があります。
また、この間、区民ニーズの多様化に伴う事務の増大など、求められる機能は大きく変化しています。
そのため、将来的な財政負担の軽減を図り、必要な区民サービスを安定的かつ継続的に提供するため、「東京都台東区庁舎整備基金条例」を本定例会に提出し、改築も視野に総合的な観点から検討を進めてまいります。
おわりに
最後に申し上げます。
来月、7月29日には、日本を代表する夏の風物詩として知られ、多くの方々に親しまれている隅田川花火大会が、実行委員会をはじめとした多くの方々のご尽力により、4年ぶりに開催されます。
隅田川花火大会の起源は古く、江戸時代の1733年に、当時の大飢饉や流行した疫病の終息などを祈願して花火を打ち上げた「両国川開き」が由来とされています。
新型コロナウイルス感染症という苦難を乗り越え、令和元年以来の開催となる今回の花火大会では、コロナ禍を乗り越えたその先の明るい未来を願いながら、大空に咲く大輪の花火、鮮やかで美しい花火をお楽しみください。
また、今年は下町七夕まつりや浅草サンバカーニバルも再開が予定されるなど、まちの賑わいは着実に戻ってきていると感じています。
この機会を捉え、国内外から訪れるお客様に対して、観光の本格的な復興に向け、「国際観光都市 台東区」の魅力を余すことなく発信してまいります。
私は、これまで、我が街「台東区」の伸展のため、誰もが住み慣れた地域で、安全で安心して暮らし続けられるよう、子育て環境の充実をはじめ、高齢者への生活支援サービスの推進、大規模災害に備えた防災対策の一層の強化に努めるなど、様々な施策を展開してまいりました。
未だ、物価の高騰など、私たちの暮らしに影響が及んでいます。今後も必要な対策を迅速に講じることで、引き続き区民生活や事業活動を全力で守り支えてまいります。
3期目においても、区議会の皆様をはじめ、区民や事業者の皆様と一体となって、誠心誠意区政を担ってまいりますので、格段のご指導、ご鞭撻を心からお願い申し上げ、私の所信といたします。
なお、本定例会には、「令和5年度東京都台東区一般会計補正予算(第2回)」ほか29件の議案を提出しています。よろしくご審議のうえ、いずれも可決賜りますようお願い申し上げます。
(注 本文は口述筆記ではないため、表現その他若干の相違があります。)
服部区長
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