令和6年第1回区議会定例会区長所信表明
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更新日:2024年2月6日
はじめに
それでは、私の区政運営に対する所信を申し述べ、区議会及び区民の皆様のご理解、ご協力を賜りたいと存じます。
昨年は新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類に変更され、社会経済活動の再開が本格化し、まちに賑わいが戻ってまいりました。経済状況についても、緩やかに回復しているものの、物価の高騰や労働力不足などは、依然として区民生活や事業活動に影響を及ぼしていると認識しております。
国は、「新しい資本主義」や「こども・子育て政策」を主要政策に掲げ、人や未来への投資の強化、デジタル社会への移行、子育て支援の拡充などの取り組みを加速しています。
本区においても、社会経済状況などの変化を的確に捉え、中長期的な視点に立って、必要な施策を柔軟かつ臨機応変に実施してまいります。
また、今回発生した能登半島地震を受け、令和6年度予算案に緊急防災対策として防災備蓄品の充実に要する経費を追加しました。
今後、国や都の動向なども踏まえ、区の防災対策に関する取り組みを総合的に検証し、防災対応力の更なる強化に取り組んでまいります。
私は、誰もが希望と活力にあふれ、いきいきと活躍できるまちの実現に向け、本年も全力で区政運営に邁進してまいります。
福祉サービスの充実について
それでは、まず、福祉サービスの充実について申し上げます。
令和7年には「団塊の世代」の方々が75歳以上の後期高齢者となり、本区においても要支援・要介護の認定を受ける方が増えていくことが予測されています。また、障害者の重度化や高齢化に伴い、障害福祉ニーズが多様化する中、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、福祉サービスを更に充実していく必要があります。
そこで、「(仮称)竜泉二丁目福祉施設」や「(仮称)北上野二丁目福祉施設」の整備を進めるとともに、民間事業者などによる地域密着型サービスや障害者グループホーム、医療的ケアに対応する事業所等の整備を促進してまいります。
また、サービス提供の根幹である福祉人材の確保は喫緊の課題です。
そこで、区内事業者を対象に、求人広告の掲載や就職説明会への参加などに要する経費を助成するとともに、都が実施する宿舎借り上げ支援の対象外となる事業者に対し、区独自に支援を開始します。また、サービス提供事業所に従事する職員への支援として、各種研修の受講費用や資格試験の受験料の助成を充実するほか、職員のメンタルヘルスケアの支援を検討するなど、様々な取り組みを通じて人材の確保、育成、定着を推進してまいります。
さらに、少子高齢化や核家族化の進行などにより、8050問題やダブルケア、ヤングケアラーなど、複合的な課題を抱える方々が増加しています。このような区民を適切な相談や支援に繋げていくためには、既存の制度や支援体制を活かしながら、区民や事業者、関係機関などの多様な主体が連携し地域全体で支援できる環境づくりが必要です。
そこで、区役所への地域福祉コーディネーターの配置のほか、「相談支援」、「参加支援」、「地域づくりに向けた支援」等を一体的に行う事業の実施を検討するなど、包摂的な支援体制を整備してまいります。
脱炭素社会の実現について
次に、「脱炭素社会の実現に向けた取り組み」について申し上げます。
本区はこれまで、区有施設への省エネ・再エネ設備の導入や家庭・事業所に対する省エネルギー化の普及啓発、他自治体と連携した森林整備によるカーボンオフセット事業を実施してまいりました。
「ゼロカーボンシティ」の実現に向け、取り組みを更に推し進めていくためには、区のみならず、区民や事業者の皆様一人ひとりが、より一層環境を意識し行動していくことが重要です。
そこで、「台東区環境基本条例」を本定例会に提出し、環境の保全に関する基本理念や区、区民、事業者、滞在者の責務を明らかにするとともに、台東区環境基本計画を改定し、総合的かつ計画的に各施策を展開してまいります。
まず、更なる省エネルギー化を推進するため、共同住宅向けのLED照明や事業所向けの省エネ設備の導入支援について、助成額と助成率を引き上げるとともに、区有施設へのLED照明導入の取り組みを拡充してまいります。
また、森林環境の保全による二酸化炭素排出量の削減を図るため、生涯学習センターの機能強化にあわせ、国産木材を使用するなど、今後、区有施設の木材利用を促進してまいります。
さらに、環境負荷の低減を図るため、現在区では、プラスチックを分別回収し資源化する取り組みを進めています。今年度実施したモデル事業の検証を踏まえ、令和6年度は一部地域で先行実施し、7年度からの区内全域実施につなげてまいります。
ゼロカーボンシティの実現に向けた施策を推進し、住む人、働く人、訪れる人にとって魅力のある持続可能なまちを、次世代へ継承してまいります。
令和6年度予算案について
次に、令和6年度予算案について申し上げます。
国は、経済見通しについて、「緩やかな回復が続くことが期待される」とし、同時に、「経済の下振れリスク、物価上昇等の影響に十分注意する必要がある」としています。
区の財政状況について、歳入では、特別区交付金の増を見込んでいますが、国において検討されている更なる不合理な税制改正に伴う影響には十分注意する必要があります。歳出では、子育て支援、高齢者・障害者へのサービスの充実、区有施設の保全など、様々な行政需要が増大しています。また、物価上昇や賃上げにより、管理的経費や工事費も増加傾向にあります。
こうした状況であっても、「世界に輝く ひと まち たいとう」の実現に向け、力強く前進していかなければなりません。
そのため、未来を見据え、区民福祉や地域活性化に資する取り組みに重点的に予算配分を行うとともに、中長期的な視点に立ち、持続可能な財政運営を推進できるよう、歳入確保の徹底や管理的業務の見直しなどに取り組み、「前進を実感できる予算」となるように編成しました。
それでは、予算案の主な事業について、長期総合計画の基本目標ごとに申し上げます。
あらゆる世代が生涯にわたって成長し輝くまちの実現について
まず、あらゆる世代が生涯にわたって成長し輝くまちの実現について申し上げます。
国は、「こども基本法」に基づき、令和5年12月に、こども施策に関する基本的な方針等を定める「こども大綱」を閣議決定しました。
「台東区次世代育成支援計画」の次期策定にあたっては、子供・若者、子育て当事者の視点に立ち、今とこれからの最善の利益を第一に考え、検討を進めるとともに、国の動向や区民ニーズ調査の結果などを踏まえ、区の子育て・若者支援施策の目標や方向性を総合的に定めてまいります。
また、子育て世帯の不安や負担を軽減するためには、保健所と子ども家庭支援センターなどが連携し、妊娠期から子育て期までの一貫した切れ目のない支援を強化していくことが重要です。
そこで、これまでの取り組みを踏まえ、子育て世帯に対する包括的な支援の強化を目的とした改正児童福祉法に基づく「こども家庭センター」の機能を整備します。全ての妊産婦、子育て世帯、子供への一体的相談支援を行う体制を強化するとともに、相談を受けてから支援につなぐマネジメントとしてサポートプランを作成し、計画的かつ効果的な支援を実施してまいります。
また、出産や育児に対する不安を軽減するため、区独自の取り組みとして、全ての産婦を対象に5万円の助成を開始します。また、出産後の母子を対象に実施している産後ケア事業の自己負担額を更に軽減するなど、より一層安心して出産ができる環境を構築してまいります。
さらに、国は学校給食無償化に向けた課題整理を行っていますが、本区では引き続き、これまで実施してきた学校給食にかかる支援を継続します。また、幼稚園・こども園・保育園などへの副食費補助については、恒久化することで、子育て世帯への支援の充実を図ってまいります。
国際化、多様化が進行する今日においては、子供の頃からグローバルな視点をもち、外国語の学習や異なる文化の理解に主体的に取り組むことが重要です。
そこで、これまで小学6年生を対象に行っていた海外留学を疑似体験できる取り組みを、小学5年生にも拡大するとともに、新型コロナウイルス感染症の影響により中止していた「中学生短期留学海外派遣事業」を再開します。さらに、英語教育をより一層推進するため「グローバル教育重点校」を新たに指定するなど、本区におけるグローバル教育の更なる充実と発展を図ってまいります。
いつまでも健やかに自分らしく暮らせるまちの実現について
次に、いつまでも健やかに自分らしく暮らせるまちの実現について申し上げます。
歯と口腔の健康は、糖尿病や心臓病などの疾患と密接に関係しているため、若い年代から自ら歯の健康を管理していくことが重要です。
そこで、歯科基本健康診査の対象に20歳を追加し、「二十歳の集い」などの機会を通じて、定期的な歯科受診や口腔セルフケアの重要性などを啓発してまいります。
また、高齢者の方々が公衆浴場を利用することは、地域との交流や社会参加を促進し、健康寿命の延伸の一助となります。
そこで、高齢者ふれあい入浴券の配付対象を希望する全ての高齢者に拡大するとともに、配付枚数を拡充します。更に無料開放の日数を増やすことで、高齢者の健康増進や地域との交流促進を図ってまいります。
また、聴力が低下した高齢者の聞こえを改善するため、補聴器が必要と医師に診断されるなどの要件を満たす方を対象に、補聴器の購入費の一部を助成することで、高齢者の社会参加や認知症予防につなげてまいります。
さらに、高齢者等がデジタル社会に取り残されることなく社会参加を進められるよう、高齢者や障害者を対象に、スマートフォンなどの使い方を学んでいただく講習会や個別相談会を充実してまいります。
活力にあふれ多彩な魅力が輝くまちの実現について
次に、活力にあふれ多彩な魅力が輝くまちの実現について申し上げます。
誰もが気軽に文化・芸術に触れられる機会を充実することは、区民一人ひとりの心豊かな暮らしにつながります。
令和7年3月にリニューアルオープンする「したまちミュージアム」については、展示内容の拡充等を図り、かつての下町の暮らしがもつ魅力を、地域や国内外の人々に発信してまいります。
令和7年12月は、名誉区民・朝倉文夫氏の二女である彫刻家・朝倉響子氏の生誕100年の節目にあたります。令和7年5月に上野の森美術館で開催する「(仮称)朝倉響子生誕100年展」などの実施に向け、準備を進めてまいります。
また、訪日外国人観光客数がコロナ禍前の水準を取り戻すなど、国内外からの観光客が急速に回復しています。
そこで、誰もが安心して快適に観光ができるよう、マナーなどを周知・啓発するためのパンフレットや食の多様性対応マップを更新し、区内外の観光案内所のほか、飲食店や宿泊所などに配布してまいります。また、効果的に観光プロモーションを推進するため、近隣区等と連携しながらアフターMICEや教育旅行の誘致に積極的に取り組んでまいります。
さらに、令和7年のNHK大河ドラマが「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」に決定し、主人公となる蔦屋重三郎が生まれ育ちその才能を開花させたゆかりの地として、本区の歴史や文化に更なる注目が集まることが期待されます。
そこで、区と地域関係団体で構成する「台東区大河ドラマ「べらぼう」活用推進協議会」が主体となり、「大河ドラマ館」の開設や関連イベントを実施します。また、事業者向けに「蔦屋重三郎」関連の商品開発支援を行うなど、まちの賑わいの創出や区内経済の更なる活性化を図ってまいります。
誰もが誇りや憧れを抱く安全安心で快適なまちの実現について
次に、誰もが誇りや憧れを抱く安全安心で快適なまちの実現について申し上げます。
少子高齢化の進行やマンションの増加など、住まいを取り巻く状況が大きく変化しており、活力ある地域社会の発展に向けて、多様なニーズに応じた良好な住環境の整備促進などの施策を更に充実していく必要があります。
そこで、区民が住み続けられるまちの実現に向け、今後10年間の住宅施策に関する総合的かつ基本的な計画となる、新たな「住宅マスタープラン」を策定します。
また、本区は国内外から多くの観光客が訪れる観光地であることや少子高齢化が進んでいることから、交通に関する多様なニーズへの対応が求められています。
そこで、更なる交通の利便性向上に向け、公道でのグリーンスローモビリティの実証実験を行います。
また、本区が活力ある都市として発展し続けていくためには、地域をはじめ多様な主体との協働のもと、まちづくりを進めていくことが重要です。
そこで、区民や事業者が主体的にまちづくりに取り組めるよう、参画の仕組みや支援メニューなどを主な内容とする、「まちづくりに係る総合的な条例」を制定し、実効性のあるまちづくりを推進してまいります。
また、地震による被害を最小限にするためには、建築物の耐震化を進めていくことが重要です。
そこで、旧耐震基準の木造住宅に対する耐震診断等の助成上限額を引き上げます。更に、新耐震基準の木造住宅についても、耐震診断・耐震改修等に係る経費の助成を開始し、災害に強いまちづくりを推進してまいります。
また、区内において高齢者を狙った特殊詐欺が依然として発生しています。
区ではこれまで、防犯チラシや広報での情報発信のほか、通話内容を録音する自動通話録音機の無料貸し出しなどを実施してまいりました。新たに、ATM周辺で携帯電話を使用している方への声かけによる注意喚起などを行い、特殊詐欺被害を未然に防ぐ取り組みを強化してまいります。
多様な主体と連携した区政運営の推進について
次に、多様な主体と連携した区政運営の推進について申し上げます。
区では、区民一人ひとりが多様性を認め合い、相互に人権を尊重し、能力を十分に発揮できる社会を実現していくため、様々な取り組みを着実に進めています。
取り組みを更に加速していくため、来年度、「台東区男女平等推進行動計画 はばたきプラン21」の次期計画の策定を進め、関係機関と連携しながら、誰もが自分らしく生きるための社会づくりを推進してまいります。
また、本区における外国人人口の増加が見込まれる中、外国人と日本人の相互理解を促進し、誰もが活躍できる「多文化共生」の地域社会を構築していくことが必要です。
そこで、多文化共生推進サポーターを養成する講座を新たに実施します。交流活動や情報発信、外国人の地域活動への参加のサポートなど、地域と外国人を繋げる役割を担う人材を育成してまいります
さらに、区を取り巻く様々な社会状況が変化する中、デジタルの力を最大限活用して本区のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進することで、区民サービスの向上と業務の効率化を一体的に図っていく必要があります。
そこで、来庁することなく様々な手続きができる電子申請をより一層拡充してまいります。また、子育て世帯や障害者などが必要な情報を簡単に取得できるアプリを導入し、区民一人ひとりに適した行政サービスを提供してまいります。
また、ガイダンスによる相談業務の補助や音声データのテキスト化を行う「AI相談支援システム」を子ども家庭支援センターに導入します。さらに、文章の作成や要約、企画立案などの補助を行う「ChatGPT」を活用するなど、業務効率化を図ってまいります。
おわりに
最後に申し上げます。
本年は、本区と大崎市が姉妹都市提携を結んで40周年にあたります。区役所1階ロビーにて今月よりパネル展を開始するほか、記念式典の開催や記念誌の作成などにより、これまでの交流を振り返るとともに、大崎市との共同による記念事業を実施してまいります。
私は、「ひと」も「まち」も輝き、区民の皆様が住んでよかった、暮らしてよかったと誇りと愛着を持ち続けられるまちの実現に向け、全力で区政運営に邁進してまいります。
区民の皆様、区議会の皆様とともに、希望に満ちた台東区の未来へと歩みを進めてまいりたいと思いますので、ご理解とご協力をお願い申し上げ、私の所信といたします。
なお、本定例会には、「令和6年度東京都台東区一般会計予算」ほか28件の議案を提出しています。よろしくご審議のうえ、いずれも可決賜りますようお願い申し上げます。
(注 本文は口述筆記ではないため、表現その他若干の相違があります。)
服部区長
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