令和元年第2回区議会定例会区長所信表明
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更新日:2019年6月13日
はじめに
令和元年第2回区議会定例会の開会にあたり、今後の区政運営の基本的な考え方について、私の所信を申し述べ、区議会及び区民の皆様のご理解、ご協力を賜りたいと存じます。
我が国は「令和」という新たな時代を迎えました。私は「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」という意味が込められたこの時代が、支え合いを基調とする地域性や多彩で粋な文化のある本区にとりまして、大きな飛躍を遂げる時代になると、確信しています。
私はこれまでの4年の間、本区が区民の皆様にとって誇りと愛着を持てるまちとなるよう、全力で区政運営に邁進いたしました。
誰もが住み慣れた地域で安心して過ごせるよう、高齢者・障害者福祉の推進や子育て支援サービスの充実に取り組んでまいりました。また、台東区産業フェアを開催するとともに、商店街活性化アドバイザーの派遣などを行ってまいりました。さらに、増加する観光バス対策に取り組むとともに、「花の心プロジェクト」を推進し、区内に花を広げ、区民のおもてなしの心を育むなど、安全安心で快適な環境の創出に努めてまいりました。
これからの4年間は、区の将来像である「世界に輝く ひと まち たいとう」の実現に向け、「台東区長期総合計画」に掲げる63の施策を着実に推進するとともに、家庭や地域社会の絆を大切にし、地域の力を高めていくことが、私の最も重要な責務であると考えています。
本区の人口は、本年3月、42年ぶりに20万人を超えました。しかし、当時と比較しますと、年少人口の比率は低下しているのに対し、高齢者人口比率は上昇しており、人口構造の変化が顕著になっています。また、自然災害への備えや老朽化が進んだ公共施設への対策など、これまでの取り組みの更なる推進が求められています。
本区が将来にわたって、魅力があふれ活力に満ちた都市であり続けられるよう、課題の解決に向け取り組むとともに、効果的・効率的な行財政運営による区民サービスの一層の向上に努めてまいりますので、区議会及び区民の皆様のご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。
今後の区政運営について
それでは、将来像を実現するための4つの基本目標及び「多様な主体と連携した区政運営の推進」に沿って、新たな4年間の区政運営における私の考え方について申し上げます。
あらゆる世代が生涯にわたって成長し輝くまちの実現
はじめに、「あらゆる世代が生涯にわたって成長し輝くまちの実現」についてです。
子供や若者を取り巻く環境は大きく変化しており、経済的な困窮、障害、引きこもりなど、抱える困難も多岐にわたっています。
こうした状況の中、区では松が谷福祉会館の再整備に合わせ、こども療育室など既存機能の強化に加え、子供・若者とその家族を包括的に支援する体制を整備してまいります。
近年、重大な児童虐待事件が後を絶たず、大きな社会問題となっています。児童虐待が起こる背景には様々な要因があり、その内容も深刻化・複雑化していることから、東京都など関係機関との一層の連携を図るとともに、虐待の未然防止や、早期発見・早期対応に向けた取り組みを推進します。
さらに、喫緊の課題である待機児童対策については、引き続き認可保育所の誘致に取り組むなど、保育サービスの拡充に努めてまいります。
また、新たに策定された国の教育振興基本計画や本区の基本構想を踏まえ、本年5月に教育行政の大方針である教育大綱の改定を行いました。
新たな教育大綱のもと、引き続き教育委員会と連携を図りながら本区の教育行政を着実に進め、世界に輝く台東区を築く人材を育むとともに、平和で、多様な人々が活躍できる魅力あるまちを目指します。
いつまでも健やかに自分らしく暮らせるまちの実現
次に、「いつまでも健やかに自分らしく暮らせるまちの実現」についてです。
誰もが互いの個性を尊重し合いながら、住み慣れた地域でいきいきと安心して暮らし続けられるまちを実現することは、基礎的自治体の長である私の責務であります。
そのため、疾病などの予防や早期発見に重点を置いた施策を展開するとともに、地域における区民の自主的な健康づくりを支援し、健康寿命の延伸を図ってまいります。
また、本区の高齢者人口は引き続き増加しており、要支援・要介護認定者数は、介護保険制度が導入された平成12年度末と比べ、約2.5倍となっています。
高齢者などの生活を地域で支えるために、地域包括ケアシステムの更なる強化に取り組んでまいります。
さらに、障害者の自立と社会参加を支援するため、就労支援や文化・スポーツなどに触れる機会を提供するほか、グループホームの整備や在宅サービスの充実を図り、住み慣れた地域での生活を支えるための取り組みを促進します。
活力にあふれ多彩な魅力が輝くまちの実現
次に、「活力にあふれ多彩な魅力が輝くまちの実現」についてです。
本区は、江戸時代より商工業の中心地の一つとして発展してまいりましたが、経済のグローバル化の進展や消費市場の縮小、深刻化する人手不足など、区内中小企業を取り巻く環境は大きく変化しています。
そこで、区内中小企業の販路拡大に向け、海外プロモーションの更なる展開や産業フェアの充実に取り組むとともに、中小企業の人材育成支援などを推進し、地域産業の一層の活性化に向けた取り組みを進めてまいります。
また、多彩な観光資源を有する本区には、国内外から多くの観光客が訪れる一方、騒音やごみの放置、外国人観光客への対応など、様々な課題も顕在化しています。
そこで、観光客のマナー啓発や受入体制整備などに引き続き取り組み、住む人も訪れる人も快適に過ごせる環境を整備してまいります。
本区では多くの人々を魅了する名所旧跡や、地域の暮らしの中で育まれ、受け継がれてきた伝統行事など、有形・無形の文化資源が輝きを放っています。こうした多彩な文化資源を活用して、区の魅力を国内外に発信し、地域の活性化につなげる施策を展開します。
誰もが誇りや憧れを抱く安全安心で快適なまちの実現
次に、「誰もが誇りや憧れを抱く安全安心で快適なまちの実現」についてです。
日本各地で大規模な地震や水害などの自然災害が相次いで発生しており、人々の暮らしに甚大な影響を及ぼしています。災害から区民の生命と財産を守るためには、地域全体の防災力向上を図る必要があります。
そのため、区民や地域が自立的に行動するコミュニティ防災の構築を支援するとともに、防災訓練などを通して、区民一人ひとりの防災知識の習得を促進し、自助・共助の意識を醸成してまいります。同時に、燃えない、燃え広がらない、倒れないまちづくりを目指し、市街地の総合的な防災性の向上に取り組んでまいります。
また、長期的な視点で区のまちづくりを推進するため、新たな「都市計画マスタープラン」を策定いたしました。今後は、本プランを踏まえ、上野地区まちづくりビジョンや谷中地区地区計画の策定、北部地区まちづくりの推進など、地域の特色を活かしたまちづくり施策を展開し、区全体の魅力を一層高めてまいります。
さらに、本区には、数多くの寺社があり、境内には樹木や草花などのまとまったみどりが残っています。加えて、暮らしの中で花に親しむ園芸文化が江戸時代から受け継がれており、地域に息づいています。
こうした自然資源の保全を図るとともに、花やみどりが持つ魅力を活かしたおもてなし空間を整備し、快適で潤いのある都市空間の創出を促進してまいります。
多様な主体と連携した区政運営の推進
次に、「多様な主体と連携した区政運営の推進」についてです。
社会経済状況や人口構造の変化に伴い、区民の生活様式や価値観も多様化しており、行政は様々な役割が求められています。地域の皆様とのより緊密な対話を通して、地域課題の解決に向け努めてまいります。
また、本区の外国人人口は増加傾向にあり、今後も増加を続けることが見込まれる中、生活支援や日本人との相互理解の促進など、外国人と日本人が互いに尊重し合い、ともに活躍できる地域社会の実現に向けた取り組みを推進します。
さらに、国内外の姉妹・友好都市をはじめ各地域との幅広い交流を通して、地域の活性化と相互の発展を図るとともに、社会経済状況や区民ニーズの変化を捉えた効果的・効率的な行財政運営を推し進め、本区が将来にわたって平和で活力ある都市であり続けられるよう、区政に全力を傾注してまいります。
「補正予算」について
続きまして、「補正予算」について申し上げます。
今年度予算については、先の定例会で申し上げたとおり、政策的な新規・充実事業の経費について、当初予算への計上を原則として見送ったことから、本定例会におきまして、補正予算をお願いするものです。
今回の補正予算は、次世代の育成や安全で安心なまちづくり、本区の活力の更なる創出につながる事業について、主に計上しています。
それでは、私の思いを込めた、今回の補正予算における主な事業について申し上げます。
「子育て・教育・生涯学習」について
はじめに、「子育て・教育・生涯学習」に関して申し上げます。
まず、「おやこサポート・ネットワーク」についてです。
核家族化の進行や地域のつながりの希薄化などにより、子育てに不安や負担を感じる保護者が増えていることから、妊娠期から子育て期の切れ目のない支援を推進することが必要です。
本年12月の浅草保健相談センターの移転に伴い、「母子健康包括支援センター」の機能を充実いたします。育児に対する不安感や負担感の大きい時期の保護者に対し、同じ悩みを持つ方々と交流する機会を提供するほか、医療機関などとの連携を強化することで、地域全体で妊産婦を支援する体制を整備いたします。
次に、「放課後子供教室実施準備」についてです。
全ての児童に学習や様々な体験、交流活動の機会を提供することを目的として、これまでに千束・石浜・大正小学校で放課後子供教室を実施し、今年度からは、蔵前・忍岡小学校の2校で新たに開始いたしました。
さらに、上野・谷中・浅草・金竜小学校の4校において令和2年度からの実施に向けて着実に準備を進めてまいります。
次に、「障害者スポーツ普及促進」についてです。
本区では、障害のある方もない方も相互に理解し合うまちづくりを目指し、誰もが楽しむことができる障害者スポーツの推進に取り組んでいます。
本年11月、世界のトップレベルの選手が熱戦を繰り広げるシッティングバレーボールの国際大会がリバーサイドスポーツセンターで開催されます。ハイレベルで迫力あるプレーを多くの区民が間近で感じることで、障害者スポーツへの関心を高めるとともに、障害者スポーツ体験会の開催などを通して、東京2020パラリンピック競技大会への機運を醸成してまいります。
「健康・福祉」について
次に、「健康・福祉」に関して申し上げます。
まず、「在宅療養連携支援」についてです。
療養が必要となった高齢者などに対し、安定的な在宅療養を提供するためには、医療関係者と介護関係者の連携が重要です。
そこで、区内医師会、歯科医師会、薬剤師会、介護サービス事業者などの団体で構成される「たいとう地域包括ケア推進協議会」が実施する研修会や、ICTを活用した多職種間のネットワーク構築などに対する支援を行い、住み慣れた地域で安心して在宅での療養生活を送ることができる環境の整備を強化します。
次に、「特定健康診査・特定保健指導」についてです。
糖尿病は、自覚症状が少ないため、治療をせず放置すると、脳血管疾患や心疾患、視覚障害などの重大な合併症を引き起こすおそれがあります。
そのため、特定健康診査の結果、糖尿病が強く疑われる国民健康保険加入者に対し、医療機関への受診勧奨と、かかりつけ医と連携した保健指導を実施し、早期発見・早期治療及び治療の継続による重症化予防に努めてまいります。
次に、「福祉作業所等工賃向上支援」についてです。
就労は、障害者が地域で自立して暮らしていくにあたり、自らの暮らしの充実や生きがい、人間関係の形成などにつながるものです。
障害者が働くことの喜びや達成感を得ながら、安心して働くことができるよう、工賃向上への取り組みを行う福祉作業所などを支援してまいります。
次に、「介護サービス人材確保」についてです。
2025年には団塊の世代が75歳以上となるなど、介護ニーズはますます高まることが見込まれる中、区においても介護人材を質・量の両面から確保していくことは喫緊の課題です。
そこで、介護技術の向上に向けた研修や介護職等就職フェアを実施するなど、介護人材確保に向けた事業を拡充し、介護人材の確保・育成・定着を総合的に推進してまいります。
「文化・産業・観光」について
次に、「文化・産業・観光」に関して申し上げます。
まず、「長浜市との文化交流」についてです。
滋賀県長浜市とは、互いの持つ資源や特長を活かしながら、文化・産業・観光分野で連携を図っています。
その一環として、長浜市において開催される「アートインナガハマ」と連携し、職人による伝統工芸の実演や東京藝術大学の学生によるワークショップなどを行うことで、本区の魅力を広く発信するとともに、相互の芸術文化の振興を図ります。
次に、「江戸創業事業所顕彰」についてです。
江戸時代に創業し、長年区内産業に貢献のある老舗を、「江戸創業事業所」として顕彰しています。今年度は、江戸創業事業所をめぐるガイドツアーを開催し、ものづくり体験などを通して本区に息づく江戸の魅力を感じていただくとともに、区内産業の更なる成長・発展につなげてまいります。
次に、「プレミアム付商品券発行」についてです。
消費税率の引き上げが本年10月に予定されています。
幼い子供がいる世帯や低所得者向けに、区内小売店や飲食店、サービス店などで利用できるプレミアム付商品券を販売し、消費税率引き上げ直後の負担感を緩和するとともに、地域における消費活動を促進してまいります。さらに、本区においては、消費税率引き上げに対し、区内事業者が円滑に対応できるよう相談窓口などの支援体制の充実を図ってまいります。
次に、「観光振興計画の推進」についてです。
本区の観光振興をより強力かつ一体的に推進するため、観光関係団体や事業者などを結び付けるコーディネーターとなる新たな観光推進組織の設立について現在検討を進めています。
有識者や観光関連団体の代表者などで構成する「(仮称)新たな観光推進組織検討委員会」を設置し、行政との役割分担や組織体制などについて議論を深めてまいります。
「まちづくり・防災防犯・環境」について
次に、「まちづくり・防災防犯・環境」に関して申し上げます。
まず、「良好な市街地形成の推進」についてです。
「都市計画マスタープラン」においてお示ししたまちづくりの将来イメージである「世界に輝く魅力があるまち」の実現に向け、街並みの現況やその形成の要因を把握するとともに、今後講ずべき地域特性に応じた適切な誘導・規制方策を検討してまいります。
次に、「避難行動要支援者対策の推進」についてです。
高齢者や障害者など、災害発生時に自ら避難することが困難な方への支援を実効性のあるものとするため、避難行動要支援者名簿に登載されている方一人ひとりの、具体的な避難支援方法などをまとめた個別支援計画の作成に向け取り組んでまいります。
次に、「微細ミストの整備」についてです。
東京2020大会においては、ヒートアイランド現象による暑さが課題であり、対策を進めていくことが求められています。
そこで、浅草文化観光センター前や駒形公園など、マラソン競技のコース沿道に微細ミストを設置して暑さの緩和を図ることにより、観光客などへのおもてなし環境を整備いたします。
「行政運営」について
次に、「行政運営」に関して申し上げます。
まず、「RPAの導入推進」についてです。
近年の働き方改革に対する社会的要請の高まりや、労働者人口の減少などにより、RPA、いわゆるロボットによる業務自動化などの先端技術を活用した業務改革が注目されています。
そこで、区の業務についても、区民サービスの向上及び業務効率化、ワークライフバランスの推進の観点から、RPAなどの実証実験を行い、本格導入に向けた検討を推進してまいります。
次に、「入谷地区センター改築」についてです。
入谷地区センター及び区民館は、区民に身近な行政の窓口であり、また区民の自主的な活動の場として欠かすことのできない施設ですが、築40年以上が経過しており、施設の老朽化が著しく、エレベーターの設置などバリアフリー化も大きな課題となっています。
そこで、施設の利便性を向上させ、区民が快適に安心して利用できるよう、施設の改築に向けた設計を行います。また、改築にあたっては、近接する入谷老人福祉館の老朽化に対応するため、必要な機能をあわせて整備いたします。
おわりに
私は、台東区長として4年間、区政を推し進めてきた中で、本区と江戸との結びつきを改めて強く認識しました。それは、江戸の面影や伝統・匠の技などの江戸文化が今なお私たちの生活に息づいているからにほかなりません。私は、江戸文化の中心地であった本区の財産であるこれらの地域資源を活用した「江戸ルネサンス事業」を引き続き推進し、江戸時代から連綿と受け継がれている本区のアイデンティティーを着実に後世に継承していくとともに、国内外に広く発信してまいります。
また、本年9月20日に、「ラグビーワールドカップ2019」がアジアで初めて日本で開催されます。本区では、大会を盛り上げるとともに区民のスポーツへの関心を高めるために、日本代表の試合にあわせて御徒町駅前のパンダ広場にてパブリックビューイングを実施いたします。さらに、来年には日本中が開幕を待ちわびている東京2020大会が、2021年には世界パラ陸上競技選手権大会やワールドマスターズゲームズといった世界規模のスポーツの大会が、相次いで日本で開催されます。
世界中が日本に注目するこの絶好の機会を捉え、世界に冠たる観光都市として区民の皆様とともに世界中から訪れるお客様をお迎えし、本区の多彩な魅力の発信と地域の活性化を一層推進してまいります。
以上、令和元年第2回区議会定例会の開会にあたり、私の所信を申し述べてまいりました。
なお、本定例会には、「令和元年度東京都台東区一般会計補正予算(第2回)」ほか18件の議案を提出しています。よろしくご審議の上、いずれも可決賜りますようお願い申し上げます。
以上をもって、私の発言を終わらせていただきます。
(注 本文は口述筆記ではないため、表現その他若干の相違があります。)
服部区長
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