平成30年第1回区議会定例会区長所信表明
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更新日:2018年2月9日
はじめに
平成30年第1回区議会定例会の開会にあたり、私の区政運営に対する所信を申し述べ、区議会及び区民の皆様のご理解、ご協力を賜りたいと存じます。
30年の節目を迎え、平成という時代を振り返ってみますと、この間、日本は超高齢社会を迎え、人口減少時代に突入しました。情報通信技術が急速に発展し、様々な分野で加速度的にグローバル化が進んでいます。阪神・淡路大震災や東日本大震災をはじめとする未曾有の自然災害も相次いで発生しました。
国は、最大の課題である少子高齢化に立ち向かうため、「働き方改革」をはじめとする新しい政策を次々と打ち出し、誰もが生きがいを感じ、能力を思う存分発揮することができる「一億総活躍社会」を創り上げるため、取り組みを加速させています。
このように、社会が大きく変革する中にあっても、区民の生命と暮らしを守り支えることが、基礎的自治体の長である私の変わらぬ使命であります。私は、区民の生活を第一に考え、山積する課題に的確に対応し、区民の誰もが安全で安心して健やかに暮らし続けられるまちを築き上げてまいります。
区民の皆様の笑顔が輝く、本区の明るい未来を切り拓いていくため、本年も全身全霊で区政に邁進してまいりますので、区議会の皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。
江戸の魅力の継承と未来への発展について
それでは、まず、「江戸の魅力の継承と未来への発展」について申し上げます。
平成30年は、江戸から明治へ時代が変わって150年の節目の年です。
江戸時代の終焉とともに、都市もまた、江戸から東京へ変わりましたが、東京には、江戸以来の政治・経済・文化の蓄積があります。
なかでも台東区は、町人文化が大きく花開いた江戸の中心にあり、洗練された美意識や生活文化は、幾多の時代を超えて今に受け継がれ、なお瑞々しく活力に溢れています。江戸からつながる伝統文化は、まさに、本区のアイデンティティーであり、台東区を 成長・発展させてきた活力の源であります。
「江戸に学び、未来を拓く。」私は、この取り組みが本区のさらなる活性化につながり、台東区の未来を支える力になるものと確信しております。
そこで本年を、「江戸ルネサンス元年」と位置付けて、本区の輝かしい未来に向けた新たな始まりの年とするため、様々な事業を展開していきます。
まず5月に、区民の皆様に江戸から現代に続く本区の歴史や文化に対する理解を深めていただくため、江戸の文化をテーマとしたトークショーを開催します。さらに、江戸時代の暮らしや風習、芸能・文化など多彩な講座をシリーズで開催していきます。
また秋には、墨田区と連携して、幕末と明治維新をテーマに、シンポジウムや史跡散歩などのイベントを開催します。これは、昨年10月に締結した、墨田区との観光分野における連携協定により実現した事業です。
さらに、台東区の地域資源を「江戸ブランド」として一層魅力あるものに磨き上げ、「江戸ブランド」を活かした積極的なシティプロモーションを展開し、本区のさらなる活性化につなげてまいります。
おもてなし環境の整備について
次に、「おもてなし環境の整備」について申し上げます。
本区では、すべての区民が花を慈しむ心とおもてなしの心を育み、心豊かでうるおいのあるまちとなることを目指し、「花の心プロジェクト」を推進しています。
昨年10月には、「花の心フラワーサポーター」としてご登録いただいた地域の皆様に、区道や公園の花壇で草花を育てていただく取り組みをスタートさせました。来年度は、小中学校などにご協力をいただき、この取り組みをさらに広げてまいりたいと思います。
今後も、地域で育まれた「花の心」を大切に育て成長させながら、地域の皆様とともに、「花の心プロジェクト」を推し進めてまいります。
また、国内外から多くのお客様が訪れる本区にとって、誰もが安心して快適に観光を楽しめる環境の整備は、おもてなしの観点からも大変重要な施策です。
このような中、来年度改築する駒形橋際公衆トイレにつきましては、多機能トイレを整備するとともに、四季折々の花で飾られたポケットパークを併設し、地域にうるおいと安らぎを与える空間を創出します。
公園内のトイレを含めまして、公衆トイレの改修と洋式化を順次進め、どなたにも快適に利用していただけるよう、整備を促進していきます。
観光案内板につきましても、新たに20基設置し、まちなかの観光案内のさらなる充実を図ります。今後も、地域や観光客のニーズを踏まえながら、東京都とも連携して、計画的に整備を進め、観光客の利便性向上に努めてまいります。
さらに、近年、海外から本区を訪れるお客様が急増し、外国語による観光案内や、多様な文化・習慣に配慮した対応など、外国人観光客の受け入れ体制の充実が求められています。
現在、上野と浅草で実施している外国人観光客向けのガイドツアーはたいへん好評で、本区のPRやイメージアップにもつながっています。
来年度は新たに、谷中地区において外国人向けのガイドツアーを開始します。さらに、浅草地区のツアー実施日を拡大するなど、観光客の満足度を高める取り組みを推進し、さらなるおもてなしの向上に努めてまいります。
平成30年度予算案について
次に、平成30年度予算案について申し上げます。
国の経済見通しは、海外経済の回復を背景に、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環がさらに進展する中で、「民需を中心とした景気回復が見込まれる」としています。一方で、「海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響等に留意する必要がある」との認識もあわせて示しています。
本区の地域経済を支える区内中小企業の景況については、一部の業種で幾分改善が見られるものの、依然として、厳しい経営環境が続いています。また、区民が、真に景気回復を実感できるほどに、消費が持ち直しているとは言い難いと認識しております。
本区の財政状況は、歳入では、特別区税や特別区交付金の増を見込むものの、国の税制改正の大綱に、地方消費税の清算基準の見直しが盛り込まれるなど、今後の財政運営への影響が懸念されます。
一方、歳出では、待機児童対策をはじめとする子育て支援や、高齢者・障害者へのサービス、低所得者への支援、区有施設の長寿命化への対応など、様々な行政需要が増加傾向にあり、予断を許さない状況です。
こうした中、平成30年度予算編成にあたっては、「予算編成方針会議」を開催し、全庁的な意識の共有化を経て、必要な取り組みに対して重点的に予算配分を行いました。
それでは、私の区政運営における5つの考え方に基づく、主な取り組みについて申し上げます。
元気な地域産業と商店街の創造に向けた取り組みについて
まず、元気な地域産業と商店街の創造に向けた取り組みについて申し上げます。
台東区には、時代を超えて受け継がれてきた伝統工芸が数多く集積しています。
本区の伝統工芸の高い技術力と優れた製品を後世に継承し、さらに発展させていくためには、より多くの方に、技術や品質の確かさを身近に感じ、愛着を持ってもらうことが重要です。
江戸下町伝統工芸館のリニューアルにあたっては、タッチパネルと大型モニターを設置し、伝統工芸の製品と職人を紹介する情報を配信するなど、より親しみやすい施設としてまいります。また、展示の充実を図り、多言語対応やICTを活用して、ガイダンス機能を強化します。さらに、職人による実演を見学できるコーナーでは、製品を手に取って、職人と直接、言葉を交わしながら、本区の伝統工芸の素晴らしさに直に触れていただきたいと思います。
また、区民の生活を支える近隣型商店街では、経営者の高齢化や後継者不足、空き店舗の増加など様々な課題を抱え、活性化に向けた取り組みが求められています。
商店街からの相談にきめ細かに対応するため、新たに、商店街活動や施策に精通した人材をアドバイザーとして派遣します。専門的見地から実情に即した助言を行い、積極的な情報提供により各種支援制度の活用を促進します。
さらに、区民に個店の魅力を知ってもらうため、お店の方が講師となって、プロならではのコツや専門知識を無料で講義する「まちゼミ」を実施する商店街を支援します。加えて、各店の自慢の逸品やサービスを紹介する冊子を作成し、効果的に情報発信することで、近隣型商店街の活力向上を支えてまいります。
快適で安全・安心なまちの創造に向けた取り組みについて
次に、快適で安全・安心なまちの創造に向けた取り組みについて申し上げます。
まず、災害対策についてです。
大規模災害の発生時には、自助・共助・公助の役割分担が重要となります。避難所の運営にあたっては、地域の皆様の自主的な管理により、行っていただく必要があります。
そこで、訓練に参加したことがない方でも避難所の開設や運営に携わることができるよう、必要な資材と業務マニュアルをパッケージにした「避難所運営キット」を、順次、避難所に配備します。キットは訓練でも活用し、実際に避難所を開設・運営する手順を確認していただくなど、地域の防災力を高める取り組みを強化してまいります。
また、今後30年以内に70%の確率で起こると予測される首都直下地震においては、電気火災による死者が多数発生すると想定されています。
そこで、通電火災の抑止に効果的な、感震ブレーカーの設置助成及び簡易型感震ブレーカーの無償配布の対象地域を、根岸と浅草北部の一部地域にも拡大し、普及啓発を促進します。
さらに、災害時には、避難指示や被災状況などの情報を的確に伝達するため、確実な通信網を確保しておくことが必要です。
そこで、防災行政無線のデジタル化を計画的に進め、高性能スピーカーの導入やメール配信機能との連携強化により、迅速かつ確実な情報発信体制の整備に努めてまいります。
次に、無電柱化の推進についてです。
都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出を進めるうえで、無電柱化は重要な課題です。
国や東京都も無電柱化を積極的に推進しており、東京都が新たな補助制度を創設するなど、無電柱化の実現に向けた環境の整備が急速に進んでいます。
本区におきましても、都の補助制度を活用し、道路に歩道がなく、無電柱化が困難とされてきた谷中と浅草の一部地域を対象に、今後の事業化に向けた検討調査を行っています。
来年度は、整備手法などを検討するため、両地域で調査を継続するとともに、地域の状況や要望を踏まえ、無電柱化の実現に取り組んでまいります。
人情あふれる福祉と健やかな暮らしの創造に向けた取り組みについて
次に、人情あふれる福祉と健やかな暮らしの創造に向けた取り組みについて申し上げます。
認知症高齢者数は増加傾向にあり、認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる仕組みづくりが必要とされています。そのためには、認知症の早期診断・早期対応に向けた支援体制の強化が重要となります。
そこで、医療・介護等の専門職と医師で構成する「認知症初期集中支援チーム」を設置し、認知症または認知症の疑いのある方のご家庭を訪問するなど、適切な医療や介護サービスにつなげていきます。
また、地域で生活することを希望する障害者にとって、在宅サービスは、生活を支える重要な柱となるものです。人工呼吸器や痰の吸引などの医療的ケアを必要とする障害者の方を介護する家族の負担は大きく、支援が求められています。
そこで、自宅などに医療的ケアを行う看護師を派遣し、日々介護にあたる家族が少しでも休息をとれるよう、負担の軽減を図ります。
近年は、出産年齢の上昇などにより、妊婦の健康管理の重要性がますます高まっています。また、子供たちが健やかに生まれ育ち、輝く未来に向けて力強く成長していくためには、親と子がともに健康であることが欠かせません。
そこで、定期的に健診を受診し、安心して出産に臨んでいただけるよう、妊婦健康診査における超音波検査の助成回数を増やします。
また、新たに、里帰り等により23区外の医療機関で定期予防接種を受けた場合や、おたふくかぜの予防接種にかかる費用を助成し、妊産婦や乳幼児の疾病予防と健康管理の充実を図ってまいります。
加えて、浅草保健相談センターの新施設整備にあたって、「母子健康包括支援センター」の機能を拡充します。育児に対する不安や負担の軽減、孤立化の防止に向けた取り組みをさらに強化し、安心して出産や子育てに臨めるよう、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を行ってまいります。
家庭の絆を大切に、子供の豊かな未来の創造に向けた取り組みについて
次に、家庭の絆を大切に、子供の豊かな未来の創造に向けた取り組みについて申し上げます。
まず、子育て支援についてです。
年少人口や共働き家庭の増加などにより、仕事と子育ての両立を支援する環境の整備が、これまで以上に求められています。
そこで、認可保育所や緊急保育室、小規模保育施設などを整備し、引き続き待機児童の解消に取り組んでいきます。
また、保護者の就労状況にかかわらず、すべての児童が安全・安心に過ごせる放課後の居場所づくりを進めるため、新たに、大正小学校に放課後子供教室を開設し、多様な体験・活動の機会を提供します。
加えて、保護者が就労、疾病等により、昼間、家庭にいない児童の受け入れ体制の充実を図るため、石浜小学校にこどもクラブを開設します。現在改築工事中の蔵前小学校につきましては、新校舎に移転後、高学年の障害児保育にも対応するこどもクラブを開設します。
次に、教育についてです。
いじめや不登校、家庭の貧困や虐待など、子供を巡る問題は多様化・複雑化し、学校だけでは解決が困難なケースもあります。
そのため、教育支援館に配置するスクールソーシャルワーカーを増員し、相談・支援体制を強化します。学校や家庭、関係機関との連絡調整をより円滑に進め、子供が抱える問題の早期解決と未然防止に取り組んでいきます。
また、高等学校等へ進学する意欲のある生徒が、家庭の環境や経済状況に左右されず、安心して学習に取り組めるよう支援を充実させることも重要です。
そこで、経済的な事情があるご家庭に対して、入学金や制服代などの進学費用の一部を給付する制度を創設し、子供の学びを支えます。
次代を担うすべての子供たちが、未来に希望を持ち、夢に向かって挑戦できるよう、引き続き、子供たちの健全な育成を支援してまいります。
歴史と文化が薫る、魅力ある国際文化観光都市の創造に向けた取り組みについて
次に、歴史と文化が薫る、魅力ある国際文化観光都市の創造に向けた取り組みについて申し上げます。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、スポーツだけでなく、文化の祭典でもあります。
障害の有無にかかわらず、誰もが参加できる文化芸術活動には、互いの理解を深め、「共に生きる心」を育む力があります。その活動を支援することは、障害者が地域の中で自分らしい暮らしを実現するための支えとなるものです。
そこで来年度は、障害者の文化芸術活動の活性化に向けた検討を進め、障害のある方もともに楽しめる音楽会やシンポジウムを開催するなど、互いを理解し支え合いながら、誰もが文化芸術に親しめる機会の充実を図ってまいります。
次に、「旧東京音楽学校奏楽堂のリニューアルオープン」についてです。
台東区には、近代日本を象徴する歴史的建造物が数多く残されており、本区の魅力を形づくっています。旧東京音楽学校奏楽堂はその一つであり、国の重要文化財にも指定されています。
11月に予定されるリニューアルオープンに際しては、演奏会などの様々な記念事業を展開し、区民の皆様に文化芸術に親しむ機会を提供するとともに、奏楽堂の歴史や価値を広く発信していきます。
また、東京藝術大学の音楽分野で学ぶ優秀な卒業生や修了生に、新たに、台東区長賞を授与し、本区の文化芸術を支える未来の担い手の支援・育成をより一層充実させてまいります。
来年度は、賞の授与式と受賞記念の演奏会を、リニューアルオープンの記念事業の一環として、奏楽堂で開催します。日本最古の洋式音楽ホールの新たな出発と若手音楽家の輝かしい門出を、区民の皆様とともにお祝いしたいと思います。
私は、2020年、そしてその先まで、本区が国際文化観光都市として輝き続けることを目指し、昨年、「たいとう文化発信プログラム」を策定しました。3月には、専用のウェブサイトを開設し、ロゴマークの活用とあわせて、一体感のあるPRを展開していきます。この取り組みを進め、本区が持つ多彩な文化の魅力を次代へ継承し、さらなる文化振興を目指してまいります。
住宅宿泊事業について
次に、「住宅宿泊事業」について申し上げます。
住宅を活用して宿泊サービスを提供する事業、いわゆる「民泊」に関しては、一定のルールを定めた「住宅宿泊事業法」が6月に施行されます。この事業については、まず、地域住民の安全で安心な生活環境が守られなければなりません。騒音トラブルやごみ処理の問題、防犯対策などが懸念される中、事業者等に対して、宿泊者と区民双方の安全・安心を確保するため、必要な措置を講じるよう求める必要があります。
そこで、住宅宿泊事業の適正な運営の確保を目的とした「東京都台東区住宅宿泊事業の運営に関する条例」を本定例会に提出しています。
この条例では、提供する住宅の管理形態による実施期間の制限や、住宅宿泊事業者及び住宅宿泊管理業者による周辺地域の住民への事前周知、苦情等に迅速に対応できる体制の確保などを定めています。
地域住民の安全で快適な生活環境と宿泊者の安全・安心を守るため、事業者等への指導を徹底してまいります。
おわりに
平成30年度は、区政運営の最高指針となる基本構想とその実現を図るための長期総合計画を策定し、本区の明るい未来を切り拓いていくため、新たなスタートを切る年です。また、まちづくり推進をはじめとする施策を戦略的に展開・加速していく年でもあります。
私は、江戸から続く豊穣の文化を礎に、未来に燦として輝く台東区を築き上げるため、満身の力を込めて区民の生活と地域の活力を一層高めるための施策を展開してまいります。そして、本区が力強く成長する道筋を描き、区民の皆様、区議会の皆様とともに歩んでまいりたいと考えています。
区民の皆様、区議会の皆様には、改めまして、ご理解とご協力をお願い申し上げ、私の所信といたします。
なお、本定例会には、「平成30年度東京都台東区一般会計予算」ほか34件の議案を提出しています。よろしくご審議の上、いずれも可決賜りますようお願い申し上げます。
以上をもって、私の発言を終わらせていただきます。
(注 本文は口述筆記ではないため、表現その他若干の相違があります。)
服部区長
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