諸説不同記
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更新日:2024年2月22日
浅草寺
令和6年登載
本資料は、宇多天皇の第3皇子である法三宮真寂親王が撰述した、『諸説不同記』の全冊揃いの写本です。『諸説不同記』とは、胎蔵曼荼羅の空海請来本とされる「現図」、別伝の「或図」、比叡山に伝来した「山図」の3つにあらわれた各尊の異同を全冊に及んで記述したものです。
本資料はもともと巻子装でしたが、折本に仕立て直されています。10帖すべての巻頭に高山寺の朱文方印が捺されており、元は京都栂尾高山寺に伝来していたことが明らかです。いつ浅草寺の所蔵に帰したかは明確ではありませんが、本資料に添えられた浅草寺中興23世亮順の付箋により、昭和23年(1948)以前の帰属であったとみられます。
本資料の第10冊の奥書識語によると、この浅草寺本『諸説不同記』は、承安元年(1171)に心覚の所持する「心覚闍梨本」を書写した「金剛」の所持本で、その「心覚闍梨本」は久寿二年(1155)に「成蓮院御本」を書写したものであるといい、あわせてこの「成蓮院御本」とは「法三御子草本」、すなわち法三宮真寂による草稿本であった「御室御本」を御室仁和寺で兼意が書写したものであることが記されています。この奥書識語は江戸時代の写本(東北大学狩野文庫本)をもとに活字化された『大日本仏教全書』所収本(大正2年(1913)刊行)にも伝えられているもので、本資料がその大本の祖本にあたることが明らかとなります。
「現図」の原本がすでに失われているなかで、『諸説不同記』は、「現図」の図様を彩色情報に至るまで詳細に伝える貴重な資料です。さらに本資料は、元は高山寺に伝来し、真寂の自筆本から二度の転写を経たのち、承安元年(1171)に書写されました。現存する『諸説不同記』の写本の系統のうち、初稿本系の祖本にあたり、かつ真寂自身の手による『諸説不同記』の原本に最も近い、全巻完備した現存最古の写本であり、資料的価値は極めて高いものとなります。
『諸説不同記』10帖
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