紙本墨書御遺告(二十五条本)
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更新日:2024年2月20日
世尊寺
平成7年登載
御遺告とは、平安時代初期に真言宗を開いた高僧空海の遺言書といわれているものです。25の箇条書きとなっていて、第1条の空海略歴にはじまり、第2条より第25条までは真言宗のさまざまな規約を記しています。
空海の伝記は、平安時代中期より著されていますが、時代が下るにしたがい歴史的事実ではない伝説が加えられ、伝記史料としての価値は低いものが少なくありません。その中で、御遺告の空海伝はもっとも古く、信憑性の高いもののひとつで、空海の実像を考える際には欠くことのできない史料です。
また、京都の東寺・神護寺・珍皇寺、和歌山県高野山金剛峯寺、奈良県室生寺・大安寺など、真言宗教団の寺院が果たすべきさまざまな役割を定めています。さらには、僧侶の生活の実態等にも言及し、平安時代中期の真言宗の動向、僧房生活のありさまを知る上で、もっとも信頼できる史料です。
御遺告の原本は、残念ながら現存していませんが、東寺や高野山等に多くの写本があります。これらの写本には、最後尾に書写した年代や人物名を記しています。これは奥書といって、書写年代の僧侶の動向、当時の文字の書風を知ることができ、宗教史や美術史を学ぶ上で、とても重要な史料となります。
世尊寺に現存する御遺告の奥書には、寛喜2年(1230)に東寺の弘賢という僧侶が写したと記されています。その他にも、弘賢が手本とした御遺告写本が、弘賢の手に入るまでの経緯についても記しており、鎌倉時代中期の東寺僧侶の動向を知る上で重要な文献史料です。加えて、世尊寺の御遺告は、多くの御遺告写本の中でも古い年代に写されたもののひとつで、きわめて貴重です。
御遺告の冒頭部分
御遺告の奥書部分
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