俳書「蓮飯は」
ページID:208624160
更新日:2024年2月20日
永称寺
平成14年登載
閏卯月のつこもりの日 永称寺にまねかれて 夜喰給りける時 鶯邨
蓮飯は これそ精舎の 菩薩かな
とある、酒井抱一自筆の俳書です。抱一の俳号・鶯邨は、鶯の名所であった根岸にちなんだものです。
文政2年(1819)閏4月30日、根岸に住む抱一は永称寺に招かれて蓮飯を夜食に供されました。この俳書はこのときの一句を記したものです。蓮飯とは、蓮の若葉を細かく切ったものを入れて炊き、炊き上がったら別の大きな蓮の葉に包んで蒸らしたもので、蓮の葉に飯が盛られたさまを、蓮華座の上の菩薩に見立てています。
抱一は他にも食物に関した句を多く残しています。抱一の自筆句集・軽挙館句藻には、美食家抱一の一面をのぞかせる句が多数あります。
河豚喰うた日はふぐゝうた心かな
素麺にわたせる箸や銀河
初がつほ一句も出でぬうまみかな
など。いずれも、季節の料理に関心を持ち、洒落心を感じさせる文化人の顔が見て取れます。
また、同句集には抱一が永称寺にまねかれた際に詠んだ句もいくつか載っています。永称寺は抱一が出家剃髪した寺院、西本願寺系の宗派に属します。当時、区内には同派寺院は全部で4箇寺しかありませんでした。同じ根岸に位置したためでしょうか、抱一と永称寺の交流が深かったことがうかがえます。
本品は、寺院との交流や美食家だった抱一らしさをよく表したものであり、台東区の文化史を考える上で重要な史料です。
俳書
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